③江戸っ子に関する川柳・ことわざA「江戸っ子は五月の鯉の吹き流し」
下の句に「口先ばかりではらわたはなし」と続きます。
5月、大空に泳ぐ鯉のぼりや吹流しは、お腹の中が空っぽですよね。「江戸っ子はキツイ口調でモノを言うけれど、お腹の中に何かを残したり悪巧みをすることはないよ」という江戸っ子気質を鯉のぼりになぞらえて表現した言葉です。
転じて、「江戸っ子は口先だけで意気地なし」という意味で使われることもあります。
④江戸っ子に関する川柳・ことわざB「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」
当時の江戸の職人は、その日に稼いだお金はその日のうちに全額使ってしまい、「貯金なんてかっこ悪い」と考えていました。あまりクヨクヨ悩むことなく、お金に綺麗であることを自慢に思っていたのでしょう。
しかし、これにはもう一つの理由があります。当時の江戸は「火事と喧嘩は江戸の花」と言われるほど火事の多い街でした。現代の様な立派な銀行など無い時代ですから、コツコツと貯金をしていても一夜のうちに全てを失ってしまうリスクが高かったのです。
そのため、「お金はその日のうちに使う」という習慣が身についたとも言われています。
⑤江戸っ子に関する川柳・ことわざC「江戸っ子の生まれ損ない金を貯め」
上で紹介した句とは対照的ですね。「江戸っ子は貯金をしない」とは言えど、全江戸っ子がそうであったというわけではありません。当時の江戸にも貯金をして、将来設計を立てて生活している人はたくさんいました。
典型的な江戸っ子は、そんな彼らのことを「江戸っ子のくせに貯金なんかしやがって。そんなのは良くない。あいつらは江戸っ子の生まれ損ないだ」と揶揄したのです。しかし、そこは素直になれない江戸っ子。単純に貯金のある彼らが羨ましくて、ちょっと強がりを言ってみただけなんだと思います。
⑥代表的な江戸弁「てやんでい」「べらぼうめぇ」の意味は?
ちゃきちゃきの江戸っ子たちが使っていた言葉、「江戸弁」。中でも「てやんでい」「べらぼうめぇ」は何かとよく耳にしますよね。
「てやんでい」とは、「何を言ってやがるんだ」が変化した言葉です。
「べらぼうめぇ」は、「馬鹿野郎!」という意味です。
ちなみに「あたぼうよ」は、「当たり前だ べらぼうめ」が省略された言葉です。
江戸弁は「べらんめえ口調」と呼ばれることもありますが、この「べらんめえ」は「べらぼうめ」が転じたものであると言われています。
⑦江戸っ子は「ひ」が言えないって本当?
江戸っ子は「ひがし(東)」が「しがし」になるなど、「ひ」が発音出来ないとよく言われています。しかし実際は、「ひ」が発音出来ないのではなく、「し」と「ひ」の発音がひっくり返っている…、というよりも「し」と「ひ」の発音そのものを区別していないと考えた方が良いでしょう。そのため、「しち(七)」が「ひち」になることもあります。
そんな彼らにとって、「朝日新聞(あさひしんぶん)」や「表彰状(ひょうしょうじょう)」、「白髭橋(しらひげばし/隅田川に架かる橋)」は天敵です。
⑧「べらんめえ口調」はここから来た!発音の連母音変化
気の短い江戸っ子は、母音が続く言葉の発音を出来るだけ手短に済ませようとします。そのため、[アイ]・[アエ]・[オイ]が[エー]に変化してしまいます。
例えば、「無い」→「ねぇ」、「お前」→「おめぇ」、「太い」→「ふてぇ」などです。その他にも、[ウイ]が[イー]に変化します。「寒い」→「さみぃ」、「悪い」→「わりぃ」の様に変わります。
⑨江戸っ子と言えばこのキャラクター!
・男はつらいよ 「車寅次郎(寅さん)」
生まれも育ちも葛飾柴又。「フーテンの寅さん」は典型的江戸っ子キャラですね。「葛飾は江戸じゃぁねぇだろう」と言う江戸っ子もいますが、こまけぇこたぁ良いんです!寅さんはちゃきちゃきの江戸っ子です。
・こちら葛飾区亀有公園前派出所 「両津勘吉」
義理人情に厚いものの、喧嘩っ早くてトラブルメーカー。そんな両さんも完璧な江戸っ子です。
・大工の源さん
花の江戸っ子、部乱目(べらんめ)町育ち。大工の腕は天下一品。曲がったことは大嫌い。「歩く正義感」と呼ばれる彼も典型的な江戸っ子ですよね。
⑩江戸っ子の現在(いま)
現代の江戸、東京はとても流動的な土地です。全国から大量の人間が集まってくる上に、バブル以降は代々続いていた下町の家を離れた人も多くいました。そのため、真の江戸っ子は消滅の危機に瀕しています。江戸弁を喋る江戸気質な江戸っ子も、今ではかなり少なくなっていると言われています。
現代では「江戸っ子」を地区ごとにさらに細分化した、「神田っ子」「深川っ子」などの名称が好んで使われる傾向にあります。
最後に
本来の意味での「江戸っ子」は数少なくなってしまいましたが、彼らの気質・思考は現代の私たちにも見習うべきところが多いですよね。現代人だからこそ、忘れてはいけない「江戸っ子気質」。今日から少しずつ生活に取り入れていきましょう!
江戸の子の仕草は、世界でも有数の大都市であった江戸の町での、トラブルを避け、お互い気持ちよく暮らすための人付き合いの知恵だったのではないでしょうか。