世界中のファンからの圧倒的支持を集めて著しい成長を続けるロレックスは、もはや日本のファンの動向だけで相場が変動するほど、簡単なものではなくなったと思えます。
特にスポーツモデルの品薄状態は、年産80万本ともいわれる大工場をもってしても埋めきれず、その強烈な人気には驚かされるばかりです。
そんなロレックスの今後について、過去の例を振り返りながら予想してみましょう。
値上がりが止まらないロレックスの時計
近年特に価格の高騰が顕著なロレックスの時計。
例えばRef.116710BLNR、GMTマスターIIの黒と青のツートンカラーのベゼルを備えるモデル。
GMTマスターといえば今年のバーゼルワールドにてRef.126710BLROをはじめとする新世代のモデルが発表され、大いに話題を振りまいています。
この発表とともに再び熱い視線を浴びることになった旧世代、すなわちこのRef.116710BLNRは、並行店の新品の平均的売価で2016年の秋頃まで90万円台であったものが品薄に押されて、1年後には120万円にまで上がりました。
バーゼルワールド以降はさらに値上がりが顕著化して、2018年9月現在では140万円台間近というところまで達している状況です。
このRef.116710BLNRに関しては、2年間で55%以上も価格が上昇した、ということになります。
サブマリーナー デイトRef.116610LNでもこの2年で約40%、登場以来高値を続ける現行のデイトナRef.116500LNも25%程度の価格上昇を見せています。
投資対象としても魅力的なロレックスの時計
「ロレックスが生産するスポーツモデルの約半数が、最終的には日本に輸入されている」とまでささやかれていた1990年代とは桁違いの、中国や東南アジア諸国などの比較的新しい市場を含めた、国際的で巨大な需要の伸びに後押しされ、慢性的な品薄状態が長期的に継続していることがこの価格の上昇を支え続けていると言われています。
名実ともにスイス最大のメゾンに成長したロレックスは、それでもまだ需要を満たしきれないほどの巨大な需要を生む知名度と人気を獲得している、ということなのでしょう。
これだけはっきりと値段が上がり続けるものというのは世の中にそう多くはなく、いろいろな意味での分かりやすさも相まって、今やロレックスの時計を投資対象として売り買いを繰り返す人が、日に日に増えてくるようになりました。
ロレックスの価値が下がらないモデル
これまでの流れを振り返れば、モデルや製造時期、細かな仕様などによって、その変動はさまざまですが、価値がはっきりと上がり続けているモデルは、ほぼスポーツモデルに限られています。
デイトナ
ファーストモデルのRef.6239からRef.6265までの手巻き、自動巻きのRef.16520、Ref.116520、そして現行のRef.116500。
その圧倒的な存在感と人気ぶりは王者と呼ぶにふさわしいもの。デイトナの人気に終わりが来るとすれば、それは腕時計そのものが価値を失うときなのかも知れません。
サブマリーナー・シードゥエラー
Ref.6200、Ref.6538、Ref.5510、そして軍用モデルやコメックス、シングルレッド等、コレクター垂ぜんのヴィンテージは、今やお金があるだけでは買えない状況です。
ロレックスのスポーツモデルの元祖として、揺るぎない人気を誇ります。
GMTマスター
スポーツモデルの中でも、2000年代後半のイタリアを中心としたブームによって他のモデルの人気に追い付いた遅咲きのコレクション。
国際線のパイロットのために開発されたルーツを持ち、スポーツモデルで最高のプレステージ性を誇ります。
ファーストモデル、Ref.6542は今や幻のアイテムとなりました。
エクスプローラー
簡潔で最高の視認性を誇るエクスプローラー、そして24時間針を備えるエクスプローラーII。
共にロレックスブームの初期のころから絶大な人気を維持してきたモデルです。
中でもエクスプローラーIIのファーストモデル、Ref.1655は、数あるアイテムの中でもとびきりの個性にあふれており、高い人気を維持しています。
以上のような歴史のあるコレクション、しかもステンレス製のモデルの強さが際立っていることは誰もが認めることでしょう。
スポーツモデル以外との比較
ロレックスが看板機種として大切に育ててきたデイトジャストについて、近年では1950年代くらいまでの古いモデルの高騰がファンの間で話題になっていますが、やはり同世代のスポーツモデルの驚愕すべき値動きと比較すれば、どうしても地味な印象を拭い切れないのです。
具体例を挙げてみましょう。
2008年ころに298,000円で買った、オリジナリティを維持した1970年代のデイトジャスト Ref.1601。
あまり使っていなければ、現在25万~30万円程度の買取価格が付くでしょう。
つまり10年間いつでも使える状態で持っていながら、いざ売却となればほぼ購入時のお金が返ってくる。それだけで随分とお得な買い物であったことになります。
変わってスポーツモデルでは、どうでしょうか。
同じく1970年代のオリジナリティをそれなりに維持したRef.5513のサブマリーナーを2008年ごろの相場価格、50万円で買っていたとして、今の相場を考えれば、それなりの雰囲気さえあれば100万円以上で売却することは、そう難しくはないはずです。
すなわち、Ref.1601も価値が落ちたどころか上がっているわけですが、それ以上にRef.5513の値動きが強烈であり、どうしてもこちらに注目が集まってしまうのです。
当然毎日のように使い込んでコンディションが落ちてくれば、相応に価値は落ちるのが普通ですが、ロレックスの時計はもともと頑丈に作り込まれており、大切にさえしていれば、それなりのコンディションが維持できる点も非常に大きいでしょう。
ロレックスの時計の相場が下がった実例
ロレックスの時計を投資対象として見たとき、誰もが気になるのが「本当に価値が下がらないのか」ということでしょう。
ここでは過去にはっきりと価値が下がった実例を挙げてみましょう。
まずは1980~1990年代のアンティークウォッチブームのころに持てはやされた、1940年代以前のバブルバックやプリンスなど。
もともと古いものでしたから、調子のよい時計ばかりではなかった上に、メーカーからの部品供給がなかったことから、修理が困難さを増していったこと。
また実用に耐えるコンディションを保った個体が、市場から徐々に姿を消していったことから、その人気は一部のファンのみに限定されるようになり、もはや一般市場で価格が高騰する様子は見られなくなりました。
またより一般的な中古やアンティークに関しても、2008年のリーマンショックの影響によって、唯一はっきりと相場が落ちたことがありました。
特にその直前に急激な高騰を見せた、いくつかのアイテムの暴落は大きな衝撃をもたらしましたが、それらにしても時間がかかったものでも、2~3年もすればリーマンショック以前の相場価格を取り戻し、その後も上がる傾向に変わりはありません。
また1990年代、ヨットマスターロレジウムRef.16622が初登場した際、価格の高騰ぶりがあまりにも激しく、その後急激に価格が落ち着いていきましたが、最近では当時のようなはっきりとしたブレーキもかからなくなってきたように思えます。
ロレックスの価値はいつか下がる?
このように、ロレックスの相場が下がった事例というのは、探せばいくらでも出てきます。しかし、すべての共通するのは、それが一時的であったこと。何らかの要因によって値下がりはしたものの、結局は元の相場付近に戻る、もしくは価値を高めているケースが多いのです。
とくに近年において、ロレックス自体の本質的な価値が下がったケースはほとんど考えられず、相場を落とした理由は外的要因がほとんどです。一部、価格の異常な高騰後に値が下がったケースもありますが、これはあくまでも“適正相場に戻った”というだけ。ロレックスの価値が下がったとは言えないでしょう。
今後訪れるロレックスの値下がり時期は?
では、ロレックスの価値が下がることは今後あるのでしょうか? 想定されるケースをいくつか考えてみましょう。
景気と為替による影響
リーマンショックと同等の世界経済に打撃を与える事件が発生した場合は、再度ロレックスの相場が下がる可能性が考えられます。
しかし、近年のコロナ禍においては事情が少し複雑です。2020年1月下旬には、インバウンド需要の激減に合わせてロレックスの販売価格の下落がはじまりました。
しかし2月中旬にもなると飛行機の便数が減少したこともあり、ロレックスの流通量が減少。需要はそのまま供給が減ったわけですから、価格が上昇しています。
このように、単に景気が悪くなるとロレックスの相場が下がる、という単純なものではありません。重要なのは需要と供給のバランス、そして為替です。あまり考えられませんが、ロレックスの供給量が一気に増え、かつ為替が円高に傾くと、ロレックスの大幅な値下がりが起こると予想されます。
ロレックス社のブランディング失敗
ブランドの価値は、適切に守られることで高められます。ロレックスの時計が機能やデザインに優れているのは確かですが、実勢価格はそれ以上とも考えられます。ひとえに、ロレックス社がブランディングを正しく続けてきた結果です。
しかし、今ロレックス社がブランディングに失敗したとしたら? 万が一、ファンから反感を買うような施策(たとえば大安売りセールなど)を取ったとすれば、現存のロレックスの時計も大きく価値を下げる可能性があるでしょう。
ただし、これまでの経営やブランド戦略を見る限り、ロレックスほど自社ブランドの価値を知り尽くしている企業もありません。その証拠に、ロレックスは今もなお高級時計の代名詞とも言えるポジションを確立しています。その圧倒的な知名度を維持しつつ、流通量を見極めた生産によって、常にプレミア感の演出に成功しています。つまり、ロレックス社のブランディング失敗は、基本的には考えられないと言えるでしょう。
ロレックスの人気は揺らがない
ヴィンテージから現行モデルまで、国際的なオークションにおいて、安定して数千万円以上の価格を付けるリファレンスを多数有するのがロレックスです。
それらの中には、もともと20万円程度の定価で売られていたものも決して少なくなく、この夢のような高騰はいつまで続くのか。
そしてそれらが、人類の英知の結晶であった機械式時計を、そしてその歴史を代表するに本当に値するものなのか。
いずれにせよ、現在のロレックスが集め続ける強烈な人気は、そう簡単に揺らぐものではないでしょう。
特に近年では、ロレックスを持つことは財テクになると言われています。
ロレックスの時計の良さは、買取価格が安定して高く、好きな時計を買って大切に使っていれば、いつか売るときも十分に元が取れる価格で買い取りしてもらえるからです。
ロレックスは立派な財産なのです。まだまだこの人気はうなぎ登りです。価値はどんどん上がっていくでしょう。